漢方エキス剤と煎じ薬の違いについて

エキス剤と煎じ薬に効果の違いはあるか

現在一般的に保険医療で使用されている漢方剤は生薬を配合した漢方湯薬をスプレードライした「エキス剤」が用いられています。

 

現在日本で保険処方が認められている漢方処方は148処方あります。このエキス剤は工業的に漢方湯薬の基準成分を規定含量以上含むように製造された薬剤です。

 

エキス剤は顆粒や錠剤の形に製造されており、服薬しやすく工夫がされており子供から高齢者までよく処方されています。

 

その一方で煎じ薬は生薬を刻んだり潰したりしたものをお湯の中で煮出すことで有効成分を抽出、濃縮した「湯薬」です。エキス剤とは異なり、患者さんご自身で生薬を煮出して湯薬を作る必要があります。

 

時間と手間がかかりますが、漢方の香りや摂取した時の風味をエキス剤よりもより強く感じることができます。

 

肝心の効能効果についてですが、結論は「エキス剤と煎じ薬の効能効果は比較することができない」と言えます。

 

そもそも、煎じ薬とエキス剤は漢方医療の時代が違うのです。煎じ薬は「古来の漢方医療」、エキス剤は「現代の漢方医療」と言えるでしょう。

 

患者さんの疾患に応じて適切な医療が異なるのは当然ですが、漢方医療の世界では「体質」や「患者さんの状態」に応じて現代漢方と古来の漢方を使い分けるのです。

 

同じ方剤でもエキス剤と煎じ薬で効能効果が違うというよりは、対象となる患者さんが違うと考えるべきでしょう。

構成生薬の成分が有効成分ではない

例えば葛根湯の構成生薬であるマオウはその有効成分がグリチルリチン酸であることから、このマオウが含まれることで含有するグリチルリチン酸の解熱鎮痛・抗炎症作用により熱が下がったり痛みが取れたり、炎症が静まると考えがちです。

 

しかし、漢方剤はほとんどの場合複数の生薬を配合しており1方剤に多くの効能効果が期待されます。

 

このようなことから、方剤1剤が有効成分と考えることが適切であるとされています。